東京地方裁判所 昭和60年(ワ)1992号 決定 1985年9月06日
申立人
株式会社甲野商事
右代表者
甲野太郎
被参加人
乙野花子
相手方
弦巻運輸株式会社
右代表者
鈴木一
同
安食民弘
右相手方ら代理人
加茂隆康
主文
一 本件各補助参加の申立をいずれも却下する。
二 本件各補助参加の申立に対する異議によって生じた費用はすべて申立人の負担とする。
理由
一 本件記録によれば、昭和六〇年二月二六日、相手方らから、被参加人に対し、別紙記載の交通事故に基づく損害賠償金の過払いを理由とする不当利得返還請求及び債務不存在確認請求の訴(当庁昭和六〇年(ワ)第一九九二号不当利得返還等請求事件)が提起され、同年四月九日、被参加人から、相手方らに対し、右交通事故に基づく損害賠償の支払を求める反訴(当庁昭和六〇年(ワ)第三八三五号損害賠償請求反訴事件)が提起されて審理中のところ、申立人は、同日、右本訴について、また、同日及び同年六月三日、右反訴について、それぞれ被参加人(本訴被告、反訴原告)を補助するため補助参加の申立をなし、その理由として、申立人は、被参加人に対し、昭和六〇年二月一八日、被参加人の相手方らに対する前記交通事故に基づく損害賠償債権を担保として、金五〇〇万円を貸し付けたから、申立人は本件各訴訟につき法律上の利害関係を有する旨主張していること、これに対し、相手方らは、昭和六〇年四月一〇日、右本訴に対する補助参加申立につき、また、同年八月二四日、右反訴に対する各補助参加申立につき、それぞれ異議を申立てた(なお、相手方らが昭和六〇年八月二四日に述べた異議には、その趣旨及び理由に徴し、同年四月九日になされた反訴に対する補助参加の申立についての異議も含まれると解される。)こと、他方、申立人は、昭和六〇年五月一五日、右の本訴及び反訴の訴訟につき、民事訴訟法第七一条による当事者参加(当庁昭和六〇年(ワ)第五三七五号)の申立てをしたことが明らかである。
二 そこで、本件各補助参加申立の許否について判断するに、補助参加は、他人間の訴訟の係属中、第三者がその当事者の一方を勝訴させるため右訴訟に参加し、その当事者を補助して攻撃防禦方法の提出、証拠の申出等の訴訟行為をする手続形態であるところ、申立人は、相手方らと被参加人間の前記本訴及び反訴の訴訟につき民事訴訟法第七一条による当事者参加の申立をしたことにより、訴訟において当事者たる地位を取得したものであるから、その地位は訴訟の第三者たる補助参加人の地位と相容れないものというべきであるのみならず、右訴訟において自ら当事者として訴訟行為をなし自己の権利の保護を求めることができるばかりでなく、当事者参加訴訟においては、三当事者で対立・牽制し合う紛争を矛盾なく一挙に解決するという法的要請から、ある二当事者間の攻撃防禦方法の提出、証拠の申出等の訴訟行為は、他の当事者に不利益をもたらすかぎりその二当事者間でも効力を生じない(民事訴訟法第六二条一項の準用)と同時に、ある当事者の一人がした自己に有利な右訴訟行為は、その者と利益を同じくするとみられる他の当事者に対しても利益に効力が生ずる(同法第六二条二項の準用)という関係にあるから、もはや当事者たる地位にある申立人が補助参加によって被参加人を補助して訴訟行為をする利益又は必要がないものといわざるを得ず、他に、当事者参加の申立をした申立人が重ねて補助参加の申立をし又は既にした補助参加の申立を維持することに特段の利益又は必要を有することの疎明がないから、本件各補助参加の申立は、当事者参加の申立により終了したかあるいは利益を欠き又は欠くに至ったものと解するのが相当である。
よって、申立人の本件各補助参加の申立はその余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないものとして、これを却下することとし、異議によって生じた費用の負担につき民事訴訟法第九四条、第八九条を適用して主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官塩崎 勤 裁判官小林和明 裁判官比佐和枝)
別紙
(一) 日時 昭和五八年八月一〇日午後二時一〇分頃
(二) 場所 横浜市瀬谷区北町四二番四号先路上
(三) 加害車両 普通貨物自動車(品川一一あ四五三九)
右運転車 安 食 民 弘
右保有者 弦巻運輸有限会社
(四) 被害車両 原動機付自転車(西区あ三四五四)
右運転車 乙野花子
(五) 事故態様 加害車両が事故現場付近で、取引先の会社に入るため左折しかけたところ、左後方より直進してきた被害車両と接触した。